映画「さがす」を観たので、自分の備忘のために思ったことをネタバレありで書く。マジでおすすめ。
作品メモ
さがす 2022年1月22日公開 123分
はじめていく小規模シアターでみた
原田智(佐藤二朗)は、中学生の娘・楓(伊東蒼)と大阪の下町で暮らしていた。ある日、彼は娘の楓に指名手配中の連続殺人犯を目撃したと告げ、その翌朝突然姿を消す。警察は本腰を入れて捜索してくれず、楓は自分の力で父を捜して歩く。ようやく日雇い現場に父親の名前を発見して訪ねて行くと、そこには全くの別人の若い男性がいた。
観た理由
・予告編が好きだったから。特に一番最後の卓球とピンポン玉のシーンが心に残ったから。たしかにピンポン玉がはずむ音は耳にこびりつくよね。
・最近邦画を観ていなかったし、コンフィデンスマンJPは東出の文春の記事で見る気なくしたから。
感想
予告編を見る限りだと、「仕事もせず貧乏で職もない冴えないオヤジが連続殺人の指名手配犯に懸賞金目当てで近づいて失踪する」というプロットの映画のように思える。実際に序盤はそのストーリーラインに沿って話が展開していく。「どうせ最後はオジサンが連続殺人の指名手配犯に殺されて終わりでしょ」という気持ちを抱きつつ、序盤はスピーディに物語が進んでいく。おおよその展開どおりに物語が進んでいくが、出演者（というより、娘役：楓を演じる伊藤蒼のおかげで）の演技力のおかげで退屈はしなかった。あと、「殺しすぎやろコイツ」みたいな関西弁ツッコミのおかげで。
そして、楓が父親：智の足跡を追いたどり着いたところで気づく。「どうせ最後はオヤジが連続殺人の指名手配犯に殺されて終わりでしょ」 ←これあえて予告編でそう思わされていただけやんけ！！！！
まさかの連続殺人犯：山内と父親：智は、いろいろあってもともと知り合いのマブダチだったのである！！ 予想外でした。そこから先は一線エンタメとして面白さの質が上がったように思い、よくよく考えると、そのあたりの伏線のようなものも張られていた。ムクドリの「DMのやり取りと実際合うと感じ違うよね」みたいな発言とか、消えていたテレビ番組とか。
智は、要介護者の自分の妻を殺害していた。それが妻の願いであると信じて。実際に手を下したのと甘言を与えたのは山下であるけれど。智は、妻を殺害したという自分の過去の行為が正しいものだったという答えを「さがす」ために（上手いこと言いたいだけ）、山内の「死を望むひとを救済する」という大義名分を信じて、手を貸して殺人を幇助していく。ストーリーの終盤で、智はさがしていた答えにたどり着くわけだが…。その演出が素晴らしかった。
連続殺人犯：山内も山内で、子供のころに親の愛情に飢えていた とか 家庭環境が良くなかった とかのニオワセがある。どういう理由でも許される行為ではないのでニオワセ程度でよかったが、智に対して父親みを感じている描写（クーラーボックスかららこぼれる缶ビール）を観て、少し切なくなった。利用する対象から信頼する手下くらいにはなっていたんだろうな。普段の智のようなオジサンが周りにいれば、少し人生も違っていたのでは？
智は人のいいオジサンなのである。奥さんや娘との良好な関係とか、ムクドリとの最終的な関係（肩越しのバイバイのシーン切ない）をみるに、その辺にいるいいオジサンなのである。そんな人のいいオジサンが道を誤ったのはなぜか。その背景として「介護」を取り巻く諸問題が描かれているように思う。僕は詳しくないし周りの身内には介護の話はないが、介護殺人や介護者への虐待のニュースはよく聞くし、高齢化社会で生きていく以上、今後の日本社会が向かい合うべき問題なんだろうな。
とはいえ、連続殺人犯×父親×娘の旅路がひとつに重なったとき、エンタメとしての面白さは最高潮になる。当方は前のめりになり、横の席のひとは鼻息荒くなっていた。わかるぜ。エンタメとしても絶品である。
そして当方はシャーマンキングを読んで育ったので、麻倉葉いわく「やったらやり返される」の精神を信じている。そのため、悪いことをした人間が因果応報の報いを受ける作品が当方好みであり、相応のラストを迎える。ここでまた裏切られる。どうせこんな風にストーリーを〆るんだろうな～ という予想を裏切られ、後半にもさらに興奮する(笑)
卓球のピンポン玉がはずむ音は、みんな好きだと思う。ここに目を付けた演出は天才的だった。劇場で聴く、はずむピンポン玉の音は単純に鼓膜が心地よい。いちど落ちたピンポン玉は元には戻らない、そんなお話だった。
非公式主題歌はコレできまり。卓球したい。エロ隠居ジジイになりたい。
