映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022)』を観た:マッドネスで切ない作品

Doctor Strange in the Multiverse of Madness (2022) - IMDb

作品メモ

ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス(原題:DOCTOR STRANGE IN THE MULTIVERSE OF MADNESS) 2022年5月4日公開 126分 ディズニー

近所のデカ映画館のDolbyで観た

ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、禁断の呪文によって時空をゆがませ、マルチバースの扉を開いてしまう。世界を元通りにするため、彼はスカーレット・ウィッチことワンダ(エリザベス・オルセン)に助けを求めるが、時すでに遅く、恐るべき脅威が人類に迫っていた。そしてその脅威こそがドクター・ストレンジと同じ姿をしたもう一人の自分だった。

movies.yahoo.co.jp

観た理由

MCUシリーズなので。

感想

 サム・ライミ監督の映画は「スパイダーマンシリーズ」しか観たことがなかったが、ホラー×スーパーヒーローものというこれまでのキャリアの集大成的な作品になっているのでは、というふうに感じた。これまでの作品全く知らないけど。序盤のニューヨークでのアクションシーンの色味とか感じはさながらスパイダーマンであるし、中盤から後半にかけてのゴア演出やホラー演出は「こんな感じのホラー映画を撮っていたんだろうな~」という気にさせてくれ、最後のゾンビ・ストレンジの出現はさながら死霊のはらわたである。タイトルしか知らないけど。ということで、演出面ではマッドネスの名前に相応しい、なかなかに面白い映画だった。

笑っちゃうくらいB級感があってカッコいいゾンビストレンジ

 問題はストーリーである。ドクター・ストレンジとタイトルは銘打っているが、スカーレット・ウィッチことワンダのお話である。ワンダヴィジョンを予習して臨んだのだが、それが祟りだいぶダメージを受けた…。ドラマ:ワンダヴィジョンでは、現実改変能力が開花し街一つを支配しながら、理想の一家として暮らしていた。最後には自らの意思で現実を元に戻し、どこかに旅立っていく。反省していたように見えたけど。今作ではさらに闇堕ちして、マルチバースの可能性に魅せられたメインヴィランとして立ちはだかる。

 「う~んワンダに救いがない」と半分涙目になりながら見ていた。両親は戦争で死に、人体改造され、弟もAIロボに殺され、自分のせいでアベンジャーズは分裂し、最愛の人を自分の手で殺す。5年後に復活したと思って、ハッピーエンド風になっているものの、自らに残ったものは何もなく、理想の家族像もまた失ってしまう。こんなの闇堕ち不可避である。こういう救われない存在に手を差し伸べるのがヒーローではないのか。巨視的にみれば合理的な行動だと思うが、大勢のハッピーエンドのために少数を犠牲にするのは…という視点で見てしまった。リアリティはあるのだけど、であればもっと葛藤などが欲しい。ワンダというキャラクターが脚本と演出の犠牲になった気がしてしまい南無三。救いがなさ過ぎて1番ホラーだった。

 また、別のユニバースのイルミナティが出てきたのには、ニワカ原作ファンとしてはテンションが上がった。満を持して登場したプロフェッサーX、ブラックボルトやリードリチャーズが、たぐいまれにみる噛ませ役だったことにも草。マルチバースといえば何でもアリのやりたい放題になってないか?(笑) と心配になるくらい面白かった。

 ということで、途中で切なくなってきたけど、総じて面白い作品だった!「ソー:ラブアンドサンダー」にも期待である。