映画『N号棟(2022年)』を観た:廃団地とジャパニーズカルトの微妙なアンマッチ感…

カッコ

作品メモ

N号棟(2022年4月29日公開) 103分 配給:SDP

川崎チネチッタで観た。観た後、四川麻婆食べた。

とある地方都市にある、かつて心霊現象で有名だった廃団地。女子大生の史織(萩原みのり)が同じ大学の啓太(倉悠貴)、真帆(山谷花純)と共にその団地を訪れると、廃虚のはずの場所には多くの住人たちがいた。3人が建物を探索しようとした矢先、突然怪現象が始まり、さらに目の前で住人が飛び降り自殺をする。彼らがショックを受ける一方で、住人たちは平然としており、おびえる若者たちを仲間にしようと迫ってくる。やがて、啓太と真帆は続発する不可解な現象によって洗脳状態に陥り、史織は追い詰められてしまう。

movies.yahoo.co.jp

観た理由

・旧団地住人として、団地が舞台のホラーは観たかったので。

・ポスターのビジュアル。

 

感想

団地と空母ポンタヌフ

 当方、団地住み経験者である。たしか、物心ついてから小学生低学年くらいまで、団地に住んでいた。団地のなかには小さな公園があって、よくそこで遊んでいた記憶がある。小学生の友達もだいたい団地に住んでおり、ナントカくんは「号棟」呼びは当時からしていた記憶がある。小学生低学年にとっては、当時は団地のなかもだいぶ広く感じられており、同じ団地内であってもから少し離れたところに住む友達の家に行くのは、ちょっとした冒険のように感じられた。当方は確か4号棟住みであり、15号棟あたりに仲良い友達が住んでいた。ポケモンのスピアーのマネしてダブルニードル!!と攻撃して泣かした記憶あり。ごめん。

 というような現体験があるものの、現在の立場から団地を捉えなおしてみる。団地とは、空間的/地域的にそのなかで完結するコミュニティである。良く言えばアットホーム、悪く言えば閉鎖的。世界が狭い子どものころは満足していたが、大人になって満足かと言われると「?」である。共同体意識が希薄になった若年世代は団地に住まず、高齢化が進んでいるという問題は耳にする。現在は都市再生機構あたりが団地入居を訴求しているが、実際進んでいるのかな? 安いなら住んでみたいけれども。

 ということで、団地居住経験があり、就活期にふとした理由で団地について調べていた生粋の団地ャーとして、団地舞台のホラー映である「N号棟」と見逃すわけにはいかなかったので観たものの・・・

団地に巣くうカルト集団「劇団廃団地」

 タナトフォビア(死恐怖症)である女子大生の史織が主人公。母親の末期治療中で延命するかどうかを選ばねばならぬ様子で、相談できる近親者もいない。そのため、メンヘラ女子大生として自暴自棄な毎日を過ごしていた。同じ大学の元カレとその新しい彼女と、ふとしたことから廃団地に行くことになり…という物語。

 ホラー映画には、心霊的な恐ろしさ と サイコ人間の恐ろしさの2種類があると思う。廃団地が舞台ということで心霊寄りの物語を少し期待していたが、本作品はサイコ寄りのカルトを描いた物語だった。そういう話を描くのであれば、現実との地続き感がほしいところであるが、現実味の薄さを感じたのが正直なところで、カルト集団でなく、「劇団廃団地の皆さん」かと思った。

 廃団地の温かい皆さんに招かれ空き部屋で一泊する主人公一行だが、突然ポルターガイストやラップ音に襲われる。急いで部屋の外に出たら、団地中で住人がパニックを起こしていた。みんなが白装束を着ているので、なんかコンテンポラリーダンスを踊っているようにしか見えなかった(笑) とはいえ住人が目の前で飛び降り自殺をして、衝撃を受ける主人公一行だったが、どうやらこの怪奇現象は住人たちのやらせだと気づく。その真相に迫ろうとするが、どうやら飛び降りて死んでしまったのは本当のようで、単なる不穏な集団ではなく、マジモノのカルト集団と気づくが…というのがもう一段踏み込んだストーリーラインである。

背景でもコンテンポラリーダンス

 謎のコンテンポラリーダンス以外にもツッコミどころが多く気になってしまった…。

  • 団地のメンバーに若者が多く、マジモンの劇団にみえて、やや草
  • 廃団地にこんなに人が住むことができるのか?行政は何しているの? 田舎にある街はずれの廃団地ならわかるが、フツーに街中だったぞ。
  • 意味ありげに鳩の死体や団地の汚いが、特に意味がない。集団の教えにも関係なし。廃団地を装うためか?
  • ヨーロッパ田舎風のダンスを踊るシーンは、マジで意味がなくて辟易。やるなら日本風のことをやってほしい。ミッドサマー風にしたいだけか?
  • 死体解体人「無理やりやらされているんだァ!」と言っていたが、逃げて密告すれば、本邦の警察能力で網打尽では?
  • 一瞬で洗脳される主人公友人に草。
  • そもそもこんな一線を超える集団が、この先進国の街中で、「死は終わりではない」という教えだけで、実現可能なのか?(一応、薬物描写はあったけれど)

ジャパニーズカルトとして日本的なやつやってほしかった。神楽鈴持つとか、花いちもんめ的なことするとか

 オウム真理教によって、日本におけるカルト集団のパブリックイメージは共有されており、その手口も大体の日本人が知っているなかであるため、この現実との地続きのなさはツッコミを浴びてしまうのでは…というのが思ったところである。

 とはいえ、「死んでも終わりじゃない」という教義そのものはどこかしら切なさが漂っていて、信じてしまうことに納得感はある。また、全体的に漂う閉鎖されたコミュニティの気持ち悪さみたいなものは良かった。つまるところ、団地を舞台にするにはこの設定はアンマッチだし、この設定をするならこの団地という舞台はアンマッチなのでは、という感想を持った次第である。

ホラー映画の女優の魅力

 ホラー映画って女優の魅力がすごく出る映像作品が多いと思っていて、本作もご多聞にもれずにそのひとつであり、主演の萩原みのりが非常に魅力的だった。ここはヒジョーにグッドポイントだった。

「N号棟」