面白すぎて感想書くの忘れていた『ゴールド・ボーイ』

 

 帯状疱疹でかなり辛く退屈な日々を送っている。働かないといけないので仕事を全てのHPを使い果たす日々なので、先週に観たけど面白すぎて感想を書くのを忘れていた映画である『ゴールド・ボーイ』の感想を書こうと思う。

 仕事終わりに観に行ったのだけれど、観終わったあとは、「おもしれー!!」という感想を抱きニコニコしながら家路につき余韻に浸りながら風呂に入り布団にもぐって心地の良い眠りにつきかなり満足してしまった。良質なエンタメを摂取したときのあの満足感を感じられるのは間違いない。

 この映画の原作は、中国の人気ドラマの「隠秘的角落」であり、さらにその原作の小説が「坏小孩」というもので、邦訳版も出版されている。「三体」といい「羅小黒戦記」といい、ここ最近の中国IPの躍進は目を見張るものがある(「三体」はいま原作小説を読んでいて、「羅小黒戦記」は観たことがないけどテレビでやっていたのを録画はしている、いつか観る)。アジアの文化やポップカルチャーという面においては、日中韓台の東アジアの各国が互いに伍して競いつつ協力しつつ発展していくことを望むばかりである。

 さて、この『ゴールド・ボーイ』の製作には中国資本が入っていることもあってか、ひとつひとつの画作りや演出が非常に丁寧である。逆に画が丁寧すぎて「オイオイふつーそんなことしないけどな」みたいなシーンもあるが。よくある洋画と比較する文脈で邦画が批判されるような、安っぽい画づくりという批判はこの映画にはみられないだろう。個人的には、会長の葬式のロジについて会議するザ・日本企業のシーンが大好き。

 加えて触れておくべきは、キャスト陣の魅力である。言わずもがな全員素晴らしいのだが、岡田将生羽村仁成の演技が素晴らしい。本作の監督は実写映画版デスノートを撮った金子監督であるが、図らずも令和版『デスノート』と言わんばかりの印象を与えてくれる。それも夜神月とLとして対峙するわけでなく、夜神月と次世代の夜神月として対峙してストーリーが進んでいくので、訳が分からないほど面白い。生粋のサイコパスあるいはソシオパスである岡田将生が、サイコ才能を目の前で開花させる羽村仁成を目の当たりにして「おいおいマジか…!」と目を見張るシーンがとても好き。 そして星野あんなの存在がこの作品全体にジュブナイルものの切なさを添えてくれる。これは脚本的な役割自体もそうなのだけれど、役者として醸し出す雰囲気がそれをブーストしている。彼女の存在によって、この映画はひと夏の大冒険的なジュブナイルものとしての得も言われぬ切なさを感じることができる。青春映画といっても過言ではない。

 この映画を日本版としてローカライズするにあたって、選ばれた舞台は沖縄であった点にも触れておこう。これは原作のエッセンスとされている貧富の格差を描くにあたって日本においてベストロケーションが沖縄であったことと、日中(そしていまは米)の分的な結節点であることが理由であろう。基地ビジネスで財を成した政商一族は日本の田舎であればどこでも出せると思うが、沖縄であるがゆえにどこかエキゾチックな感じがしていい味を出している(これは沖縄=日本本土から遠く離れた異国の地であるという無意識の偏見な気がするが)。劇中では「日本オワタ」みたいな発言が子どもの側からも大人の側からも何度かなされるわけであるが、このようなダークな物語が生まれてしまう土壌を生み出すことに自分たちも無意識に加担していないか自らを省みることが必要だとも感じられる。劇中でも印象的なシーンで米軍機が空を飛んでおり、説教臭くない程度に沖縄における米軍基地問題と貧困いうものが描写されている。

 いろいろ言ったものの、良質なエンタメなのでとにかく観てほしいポンタヌフであった。