フランチャイズの面白エッセンスを研ぎ澄まされた『犯罪都市 NO WAY OUT』

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犯罪都市 NO WAY OUT』、シリーズ3作品目ともなると「お約束」のパターンが決まってくるものだが、今回はそれをよりシャープにしてきた印象である。このフランチャイズの「お約束」と言えばなんだろうか。マ・ドンソクのステゴロ、強力班の仲間たち面々とのやり取り、そしてメチャクチャな悪意を感じる得体のしれない敵役。このあたりがこのフランチャイズの魅力といえる。

 今作では、1作目・2作目の仲間たちである強力班の面々は出てこない。マ・ドンソク演じる主人公ソクトは広域捜査班に配置換えとなっており、かつての仲間たちは出てこない。「はは~んこれは3作目の最後で出てくるパターンのやつだ」と思ったものの全く出てこない。これを踏まえて「はは~んこれはしばらくフランチャイズが続いてここぞというときのヴィランに立ち向かう仲間として出てくるやつだ」と思っている。その一方で、ステゴロ表現はよりシャープに研ぎ澄まされている。拳の一発一発がとても重く描写されている。そして重いけれども早い。気づいたら相手は地面に沈んでいる。主人公が倒した敵に対して仲間が「救急車を呼べ!死なすんじゃない!」と言っているのが説得力を増す致死性パンチである。劇場に響く殴ったときの音響の気持ちよさは映画でしか体験できない。

 そして得体のしれない敵役という意味では、今回はなかなか粒ぞろいだった。麻薬取締官でありながらも麻薬ビジネスに手を染める悪徳刑事と取引先の中国マフィア、日本側を裏切る日本のヤクザ韓国支店の皆さまと、そして裏切り者を抹殺しクスリを取り戻すために日本から派遣された殺し屋一派と、さまざまな勢力が入り乱れて戦うのが面白い。今回のベストバウトは、日本のヤクザの殺し屋集団に拉致されて金属バットで拷問を受けるマブリー、殺し屋集団のトップが電話を取って振り返ってみると、気づいたらマブリーがヤクザをボコボコにしていたというシーン。最高だった!!

 とはいえ、いろいろな勢力が出てくるぶん、そして強力班の面々が出てこず新しい人間関係が出てくるぶん、比較的説明的なシーンは多くなってしまっている。寝不足だったのでウトウトしてしまい、気づいたら暴力で起こされるということが何回かあった。それでも全体のボリュームは105分とコンパクトにまとまっておりとても観やすく、よく戦ってくれるのでおススメだ。

 さて、これまでシリーズ3作品が続いてきた本作であるが、これまでの敵はすべて組織からは外れたヴィランだった。4作目以降は、ぜひとも犯罪シンジケートそれ自体と戦っていただきたい。このシリーズはステゴロと悪役が魅力ということは充分理解できているが、次回作にはそれを超える何がが提供されることをついつい期待してしまう。といいいつつも、いつもどおりの内容が出てきても充分満足できることには変わりはないのだけど。