メチャクチャ面白かった青春映画『カラオケ行こ!』

映画『カラオケ行こ!』綾野剛主演で和山やまの人気漫画実写化、歌を通じたヤクザ×中学生の奇妙な友情 - ファッションプレス

 

 戸愚呂弟を演じていたのと同じ俳優とは思えない...!

 

実写ドラマ「幽☆遊☆白書」の戸愚呂弟役の綾野剛がヤバすぎるww(画像) | あのちゃん

 

 だいたい自分が観る映画のジャンルは、大作ブロックバスター・SF・ホラー・アクションと何かしらが劇中で爆発したり登場人物が血を流したりする作品がほとんどであり、いわゆるヒューマン系(というふうな形容の仕方であっているのでしょうか)というか人間ドラマ模様が軸の作品はほとんど観たことがない。とはいえ、まだ新年感覚がかろうじて残っている最中だ、何か新しいことをしたいという気持ちに突き動かされ仕事帰りに『カラオケ行こ!』を観に行った。理由:幽遊白書の戸愚呂弟を演じる綾野剛が良かったから、綾野剛が出ていると聞いて観に行った。

 その結果、胸が締め付けられて目頭が熱くなるハートフルな作品でメチャクチャ面白かった...今年ベスト不可避...(3作しか劇場で観てないけど)。カラオケ大会に向けた歌の練習をしたいヤクザである綾野剛演じる狂児と、変声期に悩む中学3年生の少年である齋藤潤演じる聡実くんの関係性が最高であり、かつ、中学という舞台設定にあの頃の青春を思い出す作品であった(実際にそんな青春があったかはどうかはさておき、青春があったような気に少なくともさせてくれる)。

 合唱部の部長である聡実くんは、中学最後の合唱コンクールで3位入賞した帰り、ふとしたことでヤクザの狂児に出会う。「カラオケ行こ」と誘われたことから、組長主催のカラオケ大会に向けたカラオケレッスンをおこなう。カラオケを通じて絆を深めていく狂児と聡実くん...、お互い同じ日におこなわれるカラオケ大会と合唱発表会に向けてがんばっていくのだが...。という感じの物語。

 こうあらすじを書いても「なんだそれ面白いのか?」というような感じであるが、これがすこぶる面白い。ぱっと見メッチャ怖いヤクザである狂児がマジメに中学生にカラオケのコツを乞うている構図が面白いし、狂児の人懐っこい性格とそれに段々と心を許していく聡実くんとの掛け合いが最高だ。ギャグシーンや小ネタは普通に笑えるものばかりで、劇場では都度都度笑い声が漏れていた。また、聡実くんは実は合唱部においても「変声期でソプラノが出ない」という悩みを抱えていて、ついつい部活をサボってしまうという思春期真っ盛りだ。合唱部編も、失われた(そもそも無かったような気もするが)青春を感じることができてよかった。後輩の和田くんは良いやつすぎる。そんなよくわからないヤクザへのカラオケ指南が織り交ざった聡実くんの青春と成長が、この作品のキモである。

 前編は綾野剛の魅力が溢れる映画で、後編は齋藤潤演じる聡実くんの魅力が溢れる映画だった。年の離れた親戚の兄ちゃんと甥みたいな関係性というか、あるいは年の離れた気の合う兄弟というか、シーンごとに2人の距離感は変わっていく。おまもりのシーンはメチャクチャ良くて、たぶんそういうシーンじゃないんだけどなぜか泣けた。屋上のシーンとか、ところどころコーヒーのCMかと思うくらいの人生賛歌を感じた。

 そして青春は流れゆくもので、決して戻ることのない不可逆的なものだ。そんな移ろう青春のようなものが劇中には多数出てくる。聡実くんの逃避先である「映画観る部」の巻き戻し機能が壊れたビデオデッキや、廃れていき再開発されるみなみ銀座の街、そしてもはや古いヤクザそれ自体...。そんな二度と戻らない青春模様を感じることができて心が浄化された映画だった。

 エンディングの合唱アレンジの聞いたLittle Gree Monsterの『紅』も最高。エンドロールで聴くと本編を思い出し感情が揺さぶり度にブーストがかかり泣けます。『窓ぎわのトットちゃん』ぶりにエンドロールで涙うるうるしました。

 自分もカラオケ自体も自分の声が好きじゃなくて得意ではなかったのだが、「きれいなものしかだめだったらこの街みんな消えてるぜ」的なセリフを思い出しながら、流れゆく不可逆的な日々を楽しむ気持ちでカラオケもいろいろも楽しみたいポンタヌフであった。