小説「2034 米中戦争」を読んだ:重いテーマだが読みやすい群像劇!!

 小説「2034 米中戦争」を読み終わったので感想を書いていく。

 

 

作品メモ

2034 米中戦争 著:エリオット・アッカーマン、ジェイムズ・スタヴリディス 訳:熊谷千寿 出版社:二見書房 488ページ

新品を近所のデカ書店で買った

2034年3月南シナ海で、米海軍第七艦隊駆逐艦3隻が「航行の自由」作戦中、炎上する船籍不明のトロール船に遭遇。同じころホルムズ海峡で飛行中のF-35ステルス戦闘機が制御不能になり、イランに不時着しパイロットが捕虜に――偶然に見える二つの事件だったが、中国は捕虜の解放と引き換えにトロール船の返還を要求。アメリカが対応を協議中、南シナ海上の駆逐艦2隻が撃沈。さらにサイバー攻撃を受けアメリカ主要部が大停電に。急遽米軍は二個の空母打撃群を派遣するが、中国軍に壊滅され衝撃が走る… 原題:2034: A Novel of the Next World War

 

読んだ理由

・第2次世界大戦の架空戦記ものが好きだったし、今後の未来の架空戦記ものになおさら興味をそそられたため。

・国際情勢がヒジョーにきな臭いため。

感想

 米中戦争と政治ドラマいう重くディープなテーマであるが、その実、非常に読みやすく面白い小説だった。各勢力を代表する登場人物の織り成す群像劇として物語が進んでいくので、なかなか読みやすさはピカイチである。コロナでしんどい脳みそでもしっかりと読むことができた。 インド系大統領補佐官、米軍艦隊司令官、米海軍パイロット、中国在米国防武官、イラン革命防衛隊高官の織り成す、米中戦争を舞台にした世界規模の群像劇である。

 面白いところは、この未来がありそうだな~と想像できることだ。アメリカはハイテクにものを言わせて軍備増強を図ってきたが、中国のサイバーテクノロジーの前ですべては無駄になってしまう。また、各国の思惑と誤算により、どんどん自体はエスカレーションしていく。そして米中の対立のなかで虎視眈々と漁夫の利を狙うロシア。また、第三国としての役割を果たすインド。展開に無理や無駄がなく、現実味がヒジョーに強い。近未来SFの架空戦記とは思えないのが、面白いところだ。米中両国が、誤算に誤算を重ねて悪化の一途をたどるシナリオは、なかなかに救いがない。

 この小説の特徴としては、民衆や世の中の姿が描かれず、登場人物の周辺のみで物語が進んでいくことだ。いろいろな国の視点を織り交ぜ物語を進めていくというシナリオの都合もあるのだろうが、有事の際の意思決定には民衆は介在できないことを象徴しているようにも感じた。民主主義にもいろいろ問題はあるのだろうが、やはり政治へコミットする意識を持つのは大事なことである。

 現在、ロシアによるウクライナ侵攻が待ったなしの状況であるが、自分にとっては結局他人事である。自分が物心ついてから発生したアフガニスタンイラクでの戦争も、これまた遠いところで起きている他人事である。ただ次に発生する有事は、他人事である保証は全くなく、むしろ日本は当事者になる。そんな意識を持ちながら、国際情勢のニュースを眺めなければならない、と感じたポンタヌフであった。

 

影響

ウクライナ危機の国際情勢ニュースをよく観るようになった

地政学に興味が湧いた