台風の日の午後に観る『ドラキュラ/デメテル号最後の航海』について

 zombie手帖 on Twitter: "アンドレ・ウーヴレダル監督の吸血鬼ホラー『The Last Voyage of the Demeter』 ポスター。この映画、最初に企画が立ち上がったのは2002年で、その時からずっと追いかけてたから感慨深いものがある。  https://t.co/jshZBbk4sn" / Twitter

 9月某日。終わらない夏が続くなか、首都東京に迫りくる鴛鴦の名前を冠する台風。台風上陸前夜、これきた!とばかりに台風情報を職場で吹聴し、明日は危ないから仕事を休むべきだと主張しながら、ものすごい勢いで仕事を片付け(たふりをし)た私。 翌日、思ったよりも普通の降雨だったので、なくなく仕事に向かったものの、休みたい気持ちは抑えきれず、台風が怖いので帰りますという理由で台風が逸れ雨が休んだまま帰宅した足で映画を観に行きました。

 台風の日の午後に観たのは『ドラキュラ/デメテル号最後の航海』。台風の日の午後に、普段は行かないシネコンで観るのには相応しい作品であると思い、鑑賞をしてきました。

 なぜこの映画をチョイスしたのかというと、いわゆるUniversal Monstersの作品を観たくなったからだ。理由は8月にシンガポールのユニバーサルスタジオ Revenge of the Mummyというミイラが出てくるアトラクションに載ったのだけど、なんとこのアトラクションの元映画をかのダークユニバース1作目の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』のアトラクションだと思い込んで楽しんでいたのである!(かわいい間違えである。) そのため、クラシックなモンスターへの興味が湧き始め、同じくUniversal Monstersのリブート作である『透明人間』が面白かったことも思い出し、そして台風の午後だし、ワンピースのドラマを見て船乗り熱があがっているのとか…とにかくこれまでの自分の行為全ての帰結として、この映画を観ることにした。

これまでにも数多く映像化されてきたブラム・ストーカーの名作小説「吸血鬼ドラキュラ」から、第7章「デメテル号船長の航海日誌」を映画化したモンスターホラー。

ルーマニアのカルパチア地方からイギリスのロンドンまで、謎めいた50個の無記名の木箱を運ぶためチャーターされた帆船デメテル号は、その航海の途上で毎夜、不可解な出来事に遭遇する。デメテル号船長の航海日誌に記されたおよそ1カ月におよぶ無慈悲な存在との対峙の記録をもとに、大海原をわたるデメテル号に何が起こったのか、そして謎に包まれた50個の木箱の中身をめぐる恐怖の物語が展開する。

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  このようなワンシチュエーションモノの弱点として、どうも場面が変わり映えしないという弱点はぬぐえない。こと船が豪華客船であれば船内の景色にバリエーションをもたせることもできたのだろうが、残念ながら舞台は19世紀。どこまでいっても木材と釘だけということで、正直地味な舞台なので飽きが来てしまいます。台風接近による気圧変化も相まって一瞬寝てまた起きるを繰り返したことをここに白状いたします。19世紀の木材と釘の船旅を忠実に再現した船内や衣装などは、とても凝っていたことをここにつけ足しておく。航海前の港のシーンもよくわかんないけど当時はこんな感じなんだろうな~と思いながら観ていた。忠実に再現した結果として地味になってしまったのであればしょうがない。

ワンピースのドラマと比べても遜色ない。ホラーワンピースである

 とはいえ、この映画はホラー映画であるので、肝心のホラー演出はどうだったかというと・・・ △!!! という感想である。ひたひたと得体のしれないものがしのびよってくるような演出はよい。ねっとりとしたホラー演出は、船旅そのものの長さを感じさせてくれるので理解できるものの、どうも恐怖演出が変わり映えしないという弱点はぬぐえない(1パラグラフぶり二度目)。なんかやっていることが同じで、台風の気圧変化で頭が痛かったことを差し引いても、ちょっと眠気を感じる一因になったのでは。

 ただ、△といった以上は当然Good Pointsもあるわけで。「救いのなさ」はスゴイよい。明らかに生き残り枠だろと思っていた少年が中盤にリタイアしたり、少年の形見の十字架をかざしてもドラキュラは止まらない。おいおいニンニク食って十字架かざせば退散すると聞いていたんだけども~~!?!? と思ってしまった絶望描写はとてもいい!! そして最後のシーケンスは圧巻だ。血を吸い力を取り戻したドラキュラはついに翼をはやして縦横無尽に飛び回りデルメル号を襲いまくる!! ここはガチなモンスターホラーに振り切っていてよかった!! が、ここにくるまでの道のりが本当にブルガリアからロンドンまで航海したくらい長いのがネックである。

 海外版ポスターに書いてあるとおり、この物語は“The legend of Dracura is born.”である。我々の知っているドラキュラ伯爵ではなく、それが生まれるまでの物語である。最後のバトルからのクロージングまでのシーケンスが1番テンションが上がったし、どうも『ヴァチカンのエクソシスト』的な終わり方のように思えた。次回作があったらといも見てみたい!!という感想は持てたので、大いなるプロローグなのかも。