ホラー映画と期待せずドラマ映画だと割り切ってみよう!『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

 ホラー映画×ゲーム原作映画と聞けば、観に行かないわけにはいけない。オカルトとゲームを小さいころから好んで育ってきた私にとって、実写化してホラー映画となった『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は2024年のマストウォッチリストに加えざるを得ない作品であった。

 とまあ、ゲーム好きといったものの、ゲーム版の『Five Nights at Fredy's』はプレイはしたことなく、いわゆる実況動画で知っているくらいであったが、可愛らしいアニマトロ二クス人形から5日間生き延びなければならないという設定は、なかなかドキドキしながらプレイ(自分の場合は視聴だが)できるものだと思っていた。一時期はゲーム映画の実写化=地雷映画という見方が大勢を占めていたように思うが、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や『グランツーリスモ』の成功により、ゲーム×映画ファンはゲーム実写化に一縷の望みを抱いてよいことを知る。さらに手掛けるスタジオがブラムハウスと知れば(『M3GAN』とか『透明人間』はメチャクチャ面白かった)、これは期待をしないわけがない。ということで、『Five Nights at Fredy's』フランチャイズそれ自体のファンではないものの、いちゲームファンとホラー映画ファンとして映画を観に行ったわけである。

 視聴から丸一日経ったが、この映画に対する評価が定まらないというのが正直な今のところの感想である。面白かったような気もするし、つまらなかったような気もする。たぶんどちらの感想も観た人が、『Five Nights at Fredy's』フランチャイズ自体のファンでない限りは、少なくとも抱きうる感想であるように思った。

 まず、「つまらなかった」という感想は、「ホラー映画を期待して観に行ったらドラマ映画を観ていた」というポルナレフ状態(もはやこれは00年代の化石AAなのかもしれないけれど)になってしまったことに起因する。本映画のストーリーラインにおいて、ホラー要素はあくまでサブ的な要素に位置付けられており、メインの要素に据えられていない。あくまで主人公マイクと彼を取り巻く人間ドラマ要素が主題に添えられている。主人公であるマイクは、両親を喪い、年齢の離れた妹アビーと二人で暮らしている。アビーはいつも絵をかいて過ごしており、年齢相応に発達していないように描写されており、マイクは唯一の肉親であるアビーを大切に想う一方で、そんなアビーとの関係性に悩んでいる。そんななかマイクは叔母とアビーの親権をめぐってのトラブルを抱えていたり、幼いころに誘拐されてしまった弟に対する罪悪感に苛まれていたりする。そんななか、社会的評判を維持するため、紹介された廃棄されたピザ屋の警備員としての仕事に向かっていくが...? という物語である。残念ながら、このドラマの要素が映画の殆どを占めており、アニマトロ二クスによるホラー要素は全体の30%にも満たないのではないだろうか、と思わざるを得ない。5日間の夜を生き延びる、というゲーム要素もオミットされてしまい(ストーリードリブンにならざる得ない映画に仕上げるためにはしょうがないのかもしれないが)、「ゲーム原作のホラー映画」という本作に対する期待がことごとく裏切られてしまったのは事実である。なので、まあフツーに考えれば、この映画は期待を裏切られたという点で「つまらない映画」という感想で終わるのだが、少し面白さも感じてしまった。

 「面白かったかも」と感じた理由は、まあそのドラマ要素と作品全体を通じた主人公の成長がなかなか興味深く面白かった点である。まあ序盤から中盤にかけてメチャクチャ困惑しながら観ていたわけではあるが、マイクの過去が明らかになるにつれて、ドラマ要素にものめり込むこどできた。マイクの弟は、ネブラスカ州(うろ覚え)へキャンプへ行ってる際に、誘拐されてしまい家族のもとに帰ってくることはなかった。そして母親はそのショックで自殺してしまい(間違えているかも)、そして父親も妻を失った生活に耐えられず首をくくってしまった。そしてマイク自身も、弟をさらった犯人の記憶を思い出すため、記憶を呼び覚ます睡眠療法にドはまりしている。つまるところ、マイクの両親とマイクは、過去に支配されてしまい現実と今残っている家族と真面目に向き合うことはしなかったのだ。うーん、これは妹のアビーが不憫すぎて、空想の世界に耽ってしまうよな、と思い、アビーにメチャクチャ感情移入しました。アビーの描くイラストには、大好きな兄のマイクが描かれているのがなかなか泣ける演出である。こうした過去に支配された主人公というドラマ要素が、ホラー要素とイイ感じで親和する終盤は面白く観れた。アニマトロ二クス人形のバケモノは、実は子どもたちの霊が憑依して動き回っていたものである。その子供たちは、廃墟となったピザ屋のかつてのオーナーの手によって誘拐され、殺され、そして人形のなかに身体を隠され、そして死んでしまった今もそのオーナーに支配される悲しきモンスターであったのです。その支配というキーワードでドラマ要素とホラー要素が重なり合い、マイクが現実と向き合い、アビーの空想の力で支配に打ち克つその終盤の展開は、なかなかのカタルシスを感じたものであったのです。ここらへんは面白かったです。

 とはいうものの、残念ながら期待を裏切られた失望を埋めきることはできなかったので、「ホラー映画と期待せずドラマ映画だと割り切ってみたら面白い映画」だったという総合評価。なので面白くもありつまらない映画でもあるという、メチャクチャ困惑した感想を抱いてしまったのであった。