飛行機に乗る気が失せる復活需要に水をさす韓国発フライトパニック映画『非常宣言(2023年)』を観た!!

作品メモ

非常宣言 2023年1月6日公開 141分 ハン・ジェリム監督

近所のメガシネマで朝イチの回で鑑賞

娘とハワイに向かう飛行機恐怖症のジェイ・ヒョク(イ・ビョンホン)は、空港で自分たちにつきまとっていた若い男性(イム・シワン)が、同じ便に乗っていることに不安を覚える。飛行機が離陸して間もなく乗客の男性が死亡したことをきっかけに、乗客たちが次々と命を落としていく。一方、妻とのハワイ旅行をキャンセルした刑事のク・イノ(ソン・ガンホ)は、妻が乗った飛行機がバイオテロの標的になったことを知る。

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感想

 2023年の映画館初めをカマしてきた。韓国発の高度28,000フィートのフライトパニック映画『非常宣言』で今年の一発目は決まり!!と思ってしまうほど、景気の良いディザスター映画であった。願わくば4DXで観たい、いや通常の劇場ですら4DXのように思えるような緊張感と没入感を感じる映画であった!!

 仁川発ホノルル行のKI502便の飛行機のなかで、ウイルスを散布するバイオテロが発生した。高度28,000フィートの飛行機のなかで、乗り合わせた元パイロットが解決に向けて立ち向かう。また、地上では不幸にも妻が飛行機に乗り合わせてしまった刑事が解決に向けて立ち向かう。そしてそれぞれをイ・ビョンホンソン・ガンホが演じる、上空と地上でのカリスマ俳優の挟み撃ち、という豪華な布陣である。

 まず、「飛行機」という特性を最大限を活かしたパニック描写が素晴らしい。「密室」であるがゆえに、ウイルスが滞留してしまうことを画で示している。感染者から距離を取ろうとも距離が取れない恐怖も、あの狭いエコノミークラスの座席が増幅している。また、「高度」の描写も秀逸で、効果音と音楽と光の演出が相まって、マジで怖い。南米の格安航空会社の飛行機ですら問題なかった自分が、しばらくはナショナルフラッグの飛行機にすら乗りたくないと思えるスリルを味わった。疑似、4DXである。最後にはまさかの『トップガン マーヴェリック』的なドッグファイト描写もあるとは予想だにしなかった・・・激アツである。

 

あと機内ってスマホ使えるんだね。5G万歳

 「ウイルス」というテーマだと否が応でもコロナを想起してしまう。この作品は、もともと韓国では2020年3月に公開予定であったが、コロナウイルスの影響で公開延期になり、2022年の夏に公開されたとのこと。すなわち製作はコロナ前である。コロナ禍を生き延びた我々は、人類史上最も防疫意識が身についており、この映画の防疫意識にはツッコミどころがある。せまい旅客室内なのでしょうがないけれど、感染者を隔離するという発想が出てきたのが映画が終わりかけた時点であった(笑)もうみんな死んでるやろ!! ただ、テロが起きた飛行機のなかなか着陸できない描写は、2020年にクルーズ船が入港拒否をされて彷徨ったことによく似ていたし、感染者に対して好き勝手なことを言う世論も、まあよく目にしていたことだと思った。当事者にならないと自分事として真面目に考えのは、いつでも人間の常である。

 あとは行政の有能さが、「これは皮肉なんじゃないか?」と思うほど強調されていたように思う。セウォル号沈没事故でも、梨泰院雑踏事故でも、韓国における事件事故では行政や組織の問題点が語られがちであるけれど、この映画はすげー有能な行政組織であった。隣国の我らがジャパンですら有能で迅速な対応をしていたのが面白かった。そが最もフィクションだったかもしれない。

 最後に、この映画で1番個人的に刺さったのは、「テロリストにもそれを駆り立てる背景や動機があったのではないか?」(うろおぼえ)というシーンに対して、「理解を超越する邪悪な人間も世の中にもいる」と看破するシーンである。映画の中で犯人の生い立ちや背景まで語らないことによって、このお話をキレイにまとまっているように思う。構造的な問題や背景は存在するのだろうけれど、それと切り分けてテロ行為を理解を超越する邪悪と切り捨てる姿勢はヒジョーに好みであった。

 とりあえず、次の長期休暇の旅行先は飛行機を使わずに鉄道を使うことを決意したポンタヌフであった。