原点にして頂点ではない『アサシンクリード ミラージュ』クリアレビュー

 

プレイ時間:20時間くらい(ストーリークリアまで)

 

感想の前の「俺とアサクリ」

 このゲームの感想を述べる前には、各々の『アサシンクリード』シリーズのプレイ歴と何に重きを置いているかを前提として語らねばなるまい。

 私のアサシンクリード歴は、第1作目の2007年の『アサシンクリード』からの付き合いである。とはいえ、実際にプレイをしたわけではなく、ニコニコ動画の字幕実況プレイ動画をかじりつくように観ていたわけだ。ゲームキューブとは比べ物にはならない次世代マシンによって表現された何世紀も前の世界をパルクールで駆ける暗殺者……。そう、中学生の心にブッ刺さり、そのせいで歴史に興味を持ち、高校で世界史と日本史を選択するいばらの道を選択することになってしまったのである。

 『アサシンクリード』シリーズを実況動画で知った私は、『アサシンクリードⅡ』『アサシンクリードブラザーフッド』『アサシンクリード:リベレーション』のエツィオ三部作を感動のままにプレイした。その後は、全作をプレイしたわけではないが、『アサシン クリード IV ブラック フラッグ』『アサシンクリード:ユニティ』をプレイした記憶がある。その後の『オリジンズ』『オデッセイ』『ヴァルハラ』といわゆるオープンワールド三部作はプレイしていなかった。(が、転職して暇になったので『オリジンズ』はプレイしてストーリークリアしました。)

 ということで、私の『アサシンクリード』の原体験は、オープンワールド化する前にあり、過去の世界を冒険できるというゲーム体験そのものに価値を感じていた人間である。(ということなので、現代編や過去の超文面などのSF展開はまあ別に…という感じであるのが正直なところ)

 

「歴史冒険譚」としては満足できる

 自分自身が価値を感じていた、「歴史追体験モノ」としては大満足である。8世紀に勃興したイスラム王朝であるアッバース朝のバクダッドを冒険できる。そして歴史的背景の解説や当時の街並みや人々の生活も丁寧に描写されており、期待していた歴史追体験モノとして楽しむことができた。中国からの商人(タラス河畔の戦いとか懐かしい言葉を思い出した)やハーレム、人頭税ジズヤなど、懐かしの世界史キーワードを思い出しながらプレイすることができた。

 今回の物語は、主人公が盗人からマスターアサシンになるまでの物語…ということもあり、なかなかに敵が硬く、俺TUEEEEEE!!(もはや死語?)というプレイはほぼ不可能で、ステルスプレイが強いられる。とはいうものの、戦闘システムも『オリジンズ』以降のパリィなどが導入されており、プレイヤースキルによってはゴリ押しすることもできるのがとても良いバランス。

終盤、ステルスプレイに飽きた際の写真

 街中の傭兵や商人などのサポートを受けて攻略することもできるが、そのサポートのためにはコインが必要となる。それらのコインは、サブミッションのクリア報酬に設定されているため、プレイヤーへの良い動機付けとなっていた印象。

 ストーリークリアまでのプレイ時間も15時間~20時間と非常に手頃でうれしかった。死ぬほどエンタメが溢れている現在、100時間プレイできます!!!!という謳い文句で流行ったオープンワールドゲームを少し辟易していた身としては、非常にありがたく感じた。

???なストーリーと完ぺきではないプレイアビリティ

 ストーリーはハマらず。主人公のバシムは元々『ヴァルハラ』の登場人物らしいので、その前提知識ありきの物語となっている。少なくとも終盤の展開は、それを知らなければ理解できない。私は理解できなかった。さらにいえば、主人公に感情移入ができなかった。プロローグで、自分のせいで周囲の人たちがカリフに殺されてしまうという展開があるのだが、唯一生き残った仲間を責めるという胸糞展開が待っている。この時点で「コイツクソじゃね?」となってしまい、なかなか感情移入ができなかった。

 まあ終盤で上記の伏線回収がされるので最終的には納得したが、プロローグからエピローグまで主人公のこと嫌いなのつらすぎ!

 なので、バクダッドの必殺仕事人という非常に浅いストーリー理解で進めていたが、まあそれでも楽しめたのはプレイしていて楽しいというアサシンクリードゲームデザインの魅力だと思う。あとは『ヴァルハラ』をやっていないのでエンディングくだりはよく理解できず???となったが、まあそれまで楽しかったのでヨシとした。

女子供も磔になる胸糞プロローグ

 プレイアビリティは、甲乙つけがたい感じ。パルクールの不自由さを感じたのは正直なところ。「そこまで原点回帰しなくても・・・」と思ったのは私だけでしょうか。ビューポイントからの眺めも、正直地味と言えば地味。まあ9世紀の砂漠地帯なんて眺めがそうそう良いもんじゃないよな… ここは忠実に再現したが故の欠点であるので、歴史冒険が好きな立場からは何も言うまい。

地味な遠景の円形都市

とはいえ

 総じて述べると、サクッと遊べて楽しめる良質な作品であった。初シリーズプレイにはむかないような気もしないでもないが、100時間モノに触れて失敗するよりはよいだろうという意味で、ぜひ歴史の旅に身をゆだねてほしい。

 古代文明の防具がカッコよすぎたのでそれだけでも元が取れた思ってます!

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