素晴らしい世界観と・・・なストーリーテリング、『ザ・クリエイター/創造者』

 『ザ・クリエイター/創造者』

2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。人類とAIの存亡をかけた戦争が激化する中、元特殊部隊のジョシュアは、人類を滅亡させる兵器を創り出した「クリエイター」の潜伏先を突き止め、暗殺に向かう。しかしそこにいたのは、超進化型AIの幼い少女アルフィーだった。ジョシュアはある理由から、暗殺対象であるはずのアルフィーを守り抜くことを決意するが……。

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 世界観(とそれに付随するビジュアル)は★5であるが、ストーリー(とそれに付随する背景情報)は★1、その結果中間的な評価の★2.5であるが映画館の大画面で見れたことによる加点を踏まえて★3となった佳作という感じの作品。ここ最近は有名フランチャイズやIPがスクリーンを跋扈するこの世の中で、このよつな単発のSFを観ることができるのは貴重なのかもしれないし、そのおかげで監督の好みが表出して世界観やビジュアルを引き立ててるのかも、と思うとさらに加点したくなる、そんな作品である。

Amazon | The The Art of The Creator | Mottram, James | Movies

 

 東南アジアの農村地帯に、最新ガジェットを背負った農民がいる。村には袈裟を着た人間とAIアンドロイドが托鉢や祈りを捧げている。遠くに見えるは爆撃をもたらす西側諸国の大量破壊兵器であるノマド。終わらない戦争と変わらない生活が、ここニューアジアでは送られている。技術的なブレイクスルーが起き、AIアンドロイドが開発され、仕事や社会生活に不可欠なものとなったが、人間を守るためのAIがロサンゼルスで核兵器を爆発させた。それによって、人間とAIの存亡をかけた戦争が始まった…。というお話です。背景設定に加え、それを現実だと思わせるガジェットや文明のデザインとビジュアルは素晴らしい。特に僧侶の恰好をしたAIアンドロイドが托鉢をしたりするシーンは素晴らしい。また、東南アジアの大自然のなかのメガストラクチャーなど、ウオオオとなるビジュアルが多々でてくる。これは映画館で観るに相応しい映画だと思った。

 その一方、世界観の掘り下げないしはストーリーテリングは、「…」と言わざるをえない。この物語の根底にある戦争についてもそう。AIアンドロイド vs 人間 の種を懸けた戦いというわけでもなく、東洋思想 vs 西洋思想 の究極戦争というわけでもなく、西側諸国からの非対称的な戦争である。その背景にあるのも「危険だと考えているAIアンドロイドをこの世界から駆逐する」という西側諸国との思想であり、「う~ん民主主義諸国でここまでの非対称的な不合理な戦争を継続できるのか?」という気持ちになったものの、実際の戦争もそんなもんだというある種のアイロニーが込められているのだろうと自己解釈いたしました。その根本的な部分の感情移入ができず、また、「なぜAIアンドロイドが普及するレベルの技術水準なのに、インフラストラクチャーや乗り物が70年代とかそのレベルなんだろうとか気になる部分が出続けてしまい、脳内補完が追い付かずになってしまいました。

 

 西側諸国の自爆AIアンドロイドの悲哀 や ちょっとだけ描写されているニューアジア各国の様子、あるいはAIアンドロイドの宗教観など、もっと掘り下げていただきたいところはあるものの、ストーリーラインはドストレートの王道ストーリーである。「潜入捜査するならアジア系アメリカ人が行くべきでは?」「ニューアジアもEMP兵器をつくればいいのでは?」「ずっと潜入捜査しているのに気づかなかったの…?」というようなツッコミどころは沢山あるものの、ビジュアルの力で押し込んでくるような映画である。なので会話シーンや静かなシーンはちょっと眠くなってしまった。

 ということなので、この作品の小説かゲームかで世界観を深堀してくれることを祈るポンタヌフであった。