序盤の西成の犯罪版日常ほのぼのムービー『BAD LANDS バッド・ランズ』

『BAD LANDS バッドランズ』2023年9月公開

 2024年の映画初めとしてはネットフリックスで観ました。期待した暴力描写は控えめではあったものの、犯罪版日常ほのぼのムービーからの急転直下の後半の展開と魅力的なキャラクター設定のおかげで楽しくみれた作品でした。

BAD LANDS バッド・ランズ

 

・2024年の記念すべき1作目は、2023年に観たかったけど観に行けなかった『BAD LANDS バッドランズ』。クライムサスペンスと聞くと酒!暴力!女!というような感じを期待していたのだが、そのへんの要素が少なくてビックリ。

・主人公のネリのオレオレ詐欺日常編から始まるのが面白い。序盤からオレオレ詐欺のようすが描写されるのだが、オレオレ詐欺用語や登場人物の関係性の説明がなく進んでいく。コーヒーを飲んだり、土手焼きを食べたり、自炊したり部屋の中に懸垂器具があったり、犯罪版日常系という感じがしてよい。

・西成のドヤ街の感じがその日常感を醸成しているような気もする。ネリの周りの受け子たちのバックグラウンドはあまり語られないが、「教授」や「ボクサー」というあだ名からなんとなくその人の人生を考えられるのがよい。

・そしてこの多く語らない姿勢というのが、この作品の特徴な気がする。酒!暴力!女!というようなクライム系映画に抱いている描写は、きっと主人公の過去を映像として描写すれば描くことができるが、この映画はそれをしない。登場人物との会話やさりげない描写からでそれを明らかにしていくのが、逆にいろいろ想像が働くので感情をともなってより感情移入できた気がする。

・だが、それにも限界はあるような気がしたのは、中盤以降の山田涼介演じる弟の大きな決断にビックリしてしまう。映像で観れていないぶん、映像とセリフからいろいろと想像をせざるを得ないのだが、ここまで血のつながりのない姉のことを大切に想っていたとは...という感じはぬぐえない。

・主演の安藤サクラは勿論、山田涼介と天童よしみとサリngROCKなど登場人物全般のビジュアル(見た目も所作もせりふも)がすごい良かったです。それもあってか飽きずに最後まで観れた気がいたします。そしてゲスト出演の岡田准一もカッコよかった。

・あとは、「ピラミッド構造」というのがテーマとして横たわっている作品だった。特殊詐欺グループ内のピラミッド構造から、日本を牛耳る大きなピラミッド構造まで。奪れる者たちから奪うんだ」という強い意志は登場人物全員に共通された意識ではあるが、それと同時に周囲の人に愛情を注げたかどうかが周囲とネリの違いか。

・上記のテーマを現実に起きた出来事(「忖度」、とか。そういえばあれも大阪か)をもとに描きながらも、登場人物の魅力で飽きずに観れる作品になっている日常系犯罪ムービーからの急転直下という感じで面白かった。ただ過去を想像にゆだねたぶん、大きなカタルシスは無かったかな...という感じ。

・原田監督の『ヘルドックス』も観たくても観れなかったのでまた時間見つけて見ようと思います。

(2024年1月4日Netflix視聴/2024年旧作1作目通算1作目)